都市部にあるシネコンを筆頭に、映画館の音響設備は年々進化を遂げており、迫力ある効果音も醍醐味となっています。ただし、その音が隣の部屋や建物の騒音になってしまったり、逆に映画館の外からの騒音が映画鑑賞に影響することがあってはなりません。映画館ではどのような防音対策が実施されているのか、各種の知識をまとめましたので、ご覧ください。
例えばアクション映画などでの爆発音や銃声などから衣服がこすれ合う音まで、どんな音でもしっかりと滑らかに聞こえるように、映画館での音響環境は徹底的にコントロールされています。残響時間や壁面からの反射音、客席での周波数特性などが緻密に計算されているのです。
そんな映画館での平均的な音量は85dBという想定がなされています。数字だけ見ると大きく感じますが、前述しました通り小さな音から大きな音までのダイナミックレンジを幅広く取れるように、想定音量も大きめとなっているそうです。ちなみに家庭用のブルーレイやDVDでは、65dB程度が想定されているそうです。
上記の通り映画館では内からの音漏れ、外からの騒音の双方を防ぐことが重要になりますが、そうした防音性能を示す基準として、Dr値というものがあります。例えばDr65であれば燐家のピアノやオーディオ、カラオケなどが聞こえないレベル。Dr40だと燐家の生活の様子がある程度分かるレベルとなっています。映画館ではDr65~75という高いレベルを目標値としています。
映画鑑賞の際には外から入ってくる騒音の防止はもちろん、映画館の室内で発生する設備類の騒音をいかに抑えるかという点も重要なポイントになります。映画館に求められているのはNC20~25程度――5m離れた人のささやき声が聞こえるレベル――が求められています。
そもそも遮音性能のというものは、遮音部材の重量が増えるほど、遮音性能も上がるというのが一般的です。その一方で単一の遮音部材の厚みを2倍にしても、遮音量は6dB程度しか増加しません。
より効果的に遮音性を発揮するには、部材と部材の間に空気層を設けた二重壁を構成することが有効。単純に遮音部材を2倍の厚みにするよりも、大きな遮音効果をもたらします。
加えて他のテナントなどが入居するシネコンなどでは、床に伝わる固体伝播音によって振動が発生する点にも注意が必要。床に防振浮床層を設け防振ゴムも設置するといった対策も視野に入れるべきです。
より良い音質で映画鑑賞を楽しむためには、音響障害を防止するという観点も重要です。ご存知の通り、音というものは壁などに反射して響くという性質があります。不適切に響きすぎると、音が不必要にエコーして聞こえてしまう音響障害となってしまいます。音の響きの長さ(残響時間)はもとより音質や音色も含め、響きの質を考慮することが重要です。
上記の通り必要以上に音が響きすぎるとエコーしすぎて聞こえにくくなりますが、逆に極端の響きが少ないと、耳が圧迫されるような感じになってしまいます。個人差もありますが、概ね室内平均吸音力が35%~45%程度の状態であれば適切な残響時間を得られる目安となっています。
現在40代以上の方であれば、昔に比べ、映画館の音質は格段によくなっていることを実感されていることでしょう。音源が光学記録方式からデジタル記録方式となり、スピーカーの性能も格段に向上しているからです。
そうしたサウンドを心ゆくまで楽しむには、映画館の防音対策が重要。内から外へ騒音を発生させない、外からの騒音で映画鑑賞を妨げない、双方の視点が欠かせません。加えて映画館という空間ならではの、音の響き具合の調整も不可欠。これらの点を、しっかりと留意しておいてください。
参照元:アコス工業
防音力の高い防音材メーカーをお探しの方へおすすめ!①防音材の品質で第三者機関から受賞されている、②対応できる周波数や騒音レベルの数値測定をし、それを公表している、という2つの基準から、防音材メーカー3社を厳選しました。それぞれ、得意な建物別に分類してご紹介します。
【選定基準】
2021年12月16日(木)時点、Google検索で「防音材 メーカー」で上位表示していた52社から、「防音材の品質について受賞歴(※)」があり、「対応できる周波数や騒音レベルの数値測定を公表」しているメーカーの中から選定。
「受賞歴」「数値測定を公表」しているメーカーの中ではそれぞれ…
・静科:19つのラインナップを揃え、一番製品のバリエーションが多く、対応範囲が広い
・ユニックス:大型公共施設の事例掲載が最多(2021年12月16日(木)時点)
・日鉄神鋼建材:道路・鉄道に特化した防音材のラインナップ
(※)防音材の品質で第三者機関から受賞されている(デザイン受賞は除く)